- 2012-10-07 Sun 20:10:28
- 穂高
で、夜明け前に涸沢へ駆け下り(というのはあくまで比喩で、実際には雪の岩場を走ったりしてはいけません)「三段染め」を撮影してきた。

(2012/10/07 6:30am)
「三段染め」とは新雪の“白”と紅葉の“赤や黄”、山麓の“緑”、或はそれに青空を加えた三色のコントラストを言うらしいが、
自然がまれにみせてくれる「季節のコントラスト」とでもいうもので、涸沢の紅葉と新雪となるとそうそうはお目にはかかれない。
だがその雪も昼頃にはおおむね解けてしまい、つかの間の絶景となった。
さて、昨日「雪が積もるとマズいことに…」と記したのは、雪による事故を心配したからだ。
昨夜はなんと涸沢のテントは1100張り(!?)を数えたらしく、涸沢ヒュッテと涸沢小屋の宿泊と併せると涸沢に約2500人、
それに稜線の小屋の宿泊も入れると3000人近い登山者がこの穂高にいたことになる。
もちろんその全ての方々が雪の危険個所を歩かれるわけではないのだが、何か事が起こって不思議ではない。
それが、やはり起きてしまった…
今朝は夜明け前から岐阜県警の穂高常駐隊員が、
「今朝の稜線は積雪のため行動困難です。縦走はお控え下さい。」との呼びかけを行っていたのだが、
その声が届かなかったのか、穂高岳山荘から北穂へ向かった3名パーティの内のひとりが最低コル付近で滑落、重傷を負った。
このレスキューには北穂小屋の足立さん達が出動してくださったのだが、
相変わらずの冷静な判断と的確な処置で、ギリギリの天候のなか現場からヘリ救助がなされた。

(2012/10/07 10:15am ザイテングラートより)
北穂の足立さんは滝谷をはじめ数々の難所でのレスキューを担ってきた大ベテランで、僕が尊敬し見習う小屋番のひとりである。
いつも控えめで、決して多くを語らない足立さんだが、
大自然の中で、時に素晴らしい景観に出会うことのできる小屋で働けることを「特権」と表現する。
そして、こう云うのだ、「特権には義務が伴う。だから登山者の命を守る救助活動は続けていかなくてはならない。」と。
およそ北穂周辺での救助活動というと非常に困難なケースが多い。
その計り知れず危険度の高い中で30年以上のキャリアを持ち、周辺を知り尽くした足立さんであればこそ救えた遭難者も数多いと思う。
たまたま今日はザイテンからレスキューを傍受していたのだが、
微妙な諸条件のなかでの、まさにギリギリの収容タイミングであり、足立さんの好判断が光った救助であったと思う。
一方、涸沢では涸沢で、複数のレスキューが立て続けにあったようで長野県警の救助隊員や山小屋スタッフがその対処に追われていた。

(2012/10/07 10:20am 涸沢から要救助者を収容する長野防災ヘリ「アルプス」)
紅葉で大賑わいの涸沢の山小屋では、連日息もつけないような激務が続いていると思う。
そんな中でのレスキュー対応にはほんとうに頭が下がる。
みんなヘロヘロなのに…
どうか、がんばってくれっ と。
それぞれの小屋が、それぞれに、
身体を張って、山と登山者と小屋を守っている。
だからこそ、そんな熱い想いに支えられて、穂高はこんなに多くの人に愛されているのだと思う。
…と、他人事みたいに記しているが、
この寒気や降雪もなんのその… わが穂高小屋もそれなりに今日も忙しかった。
どうか明日は、事故の無い一日となるよう祈るばかりだ。

(2102/10/07 「月と涸沢岳」)
Comments: 7
- tanu URL 2012-10-11 Thu 11:04:07
素敵な写真をありがとうございました!
ヘリでの救出があった、ちょうどその時をパノラマルートから見ていた者です。
初冠雪があり、もうもう、焦がれるばかりの景色を見せてもらった後だったからこそ、
「なんでそんなことをするんだろう、、」と、余計に頭にくるものがありました。。
私はテン泊でしたが、出発前に山の様子を伺いに小屋に行くと、
積雪があったこと、アイゼン着用でないと無理なこと、
が、掲示してありましたもので、登頂は断念しての下山中の出来事。
「自分だけは大丈夫」
と思ってしまうのでしょうか?
素晴らしい景色を見せてくれた涸沢ですが、
私にとっては、最初で最初の経験になるかと思います。
人間に会いに行くのではなく、自然に会いに行きたいもので、、- Sergeant major 966 URL 2012-10-09 Tue 23:25:00
《自己責任》
緻密な計画。
最悪の事態の想定。
冷静な判断。
あきらめ「また次に来ればよいさ!何年先でも」
計画にふさわしい登山の実績。
そして年齢相応の行動。
山は甘くない。
- 佐治重衡 URL 2012-10-08 Mon 20:57:46
八郎さん
いつもきれいな写真と近況報告ありがとうございます。
昨年の同時期に涸沢ー奥穂と入らせていただきましたが、そのときの1000をこえるテントの1人となったときに、ちょっとこれは穂高の限界を超えているのではと思いました。今年は、そのこともありこの連休での入山を控えました。
事故も起きてしまったようで残念です。
この夏はひとりで奥穂山荘にあがりました。八郎さんにはご挨拶できませんでしたが、久しぶりに英雄さんにもお会いできました。
診療所にも顔だしました。ちょうど、自分が大学生のときに一緒に登った岩間先生と25年ぶりに奥穂診療所で再会です。
むかしから変わらない、北アルプスであってほしいとおもいました。
- 福太郎 URL 2012-10-08 Mon 17:26:39
6日~7日と穂高岳山荘テン場に2連泊しました。西穂へ縦走予定でしたが、例の積雪のため、様子見してから涸沢岳、奥穂高岳ピストンし、本日涸沢から下山しました!
昨日山荘で、「光の五線譜」購入させてもらいました!今田さんが、一番オススメといわれてたので。
来年またGWに行きたいと思います!- 海月 URL 2012-10-08 Mon 13:52:25
6、7日と涸沢に行きました。6年連続で秋の涸沢を楽しみましたが、今年は特に黄色が映えて良かった。
6時に上高地を出発し10時半に涸沢に到着しました。テント場はまだ整地された場所があり確保しましたが昼前には無くなり、ガレ場を整えテントを張りだす人があり、4人位だと植生の中にまで張る始末でした。
昨年からテント数が急に増え個人的には居心地が悪くなり、来年からは10月下旬にしようかと思います。
何か自然が強烈な警告を人に与える嫌な予感がします。
涸沢から穂高岳山荘に6日に向かうつもりでしたが、高雲で背筋がぞくぞくする生暖かい感じで雨か雪になるような直感で、明日朝に判断する事にしました。
アイゼンを忘れていたので翌日撤退しました。
帰り道本山橋の先で先行する30人位の中高年の団体が上下共大渋滞を引き起こし、引率者は前後2人でテントも持っておらず、迷惑を通り越して呆れます。
そのうち焼岳でも噴火して上高地封鎖なんて事もあったりして?- Hachiro URL 2012-10-07 Sun 22:34:24
>よねちゃん さま
コメントと共にお心遣い、ありがとうございました。
ほんとうに、そのとおりで、登山者は誰も事故なんておこそうと思ってはいない。
でも、自然のほうが人よりも必ず上回った存在であることは確かであって、
だから、山へ登る人にとっては想像力と謙虚さが不可欠だと思うのです。
自分の都合だけで山を歩くのではなく、その時その時の山の都合(状況)にも耳を傾ける…
そんなふうに、山と関わっていきたいものですね。
- よねちゃん URL 2012-10-07 Sun 20:51:52
事故というのは気を付けていても起きることがあるのは仕方がない。でもあらかじめ防げる事も多々あるのではないかと思います。登山者には天候や体調、その時の状況で無理をしない迷惑をかけない登山をしてもらいたいものです。救助する側も命がけ、一つ間違えば危険と隣り合わせで二次災害になりかねないと言う事を山に入る登山者は把握しておかなければならないのでは。レスキューの方々、山小屋の方々本当にご苦労様です。