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2016年10月 Archive
晴朗なれど風強し
- 2016-10-29 Sat 15:02:19
- 穂高
昨日の雪はやはりその後雨となりもうほぼ消えてしまいました。
今日は寒気が居残ったせいか、午前中から青空が広がったものの風が強く寒いです。

(2016/10/29 10:30a.m.奥穂岩峰湧雲)
さて昨日記した西穂からのお客さんについて。
結果からいうと無事に小屋へ到着されました。
午後2時頃に小屋へ着いた20代後半のその4人は皆ズブ濡れで、小屋へ入るなりぶるぶると震えながらストーブにかじりついておりました。
雪から氷雨に変わるというおよそ絶悪の条件の中、アルプス最難の縦走路を経てきたそれぞれの表情には「マジ死ぬかと思った」という怖れと、「生きててヨカッタ」の安堵が伺えました。
夕食の折に「どの辺で雪になった?」と僕が訪ねると、
「西穂越えて間ノ岳の辺りから…」と、ちょっとバツが悪そうにひとりが答え、
「天狗のコルから岳沢へ下りるエスケープって知ってた?」とさらに訪ねると、
「…知ってたんスけど、まぁイケると思って」と。
「そのあとジャンからロバ耳あたりキビしかったやろ?」とさらに訪ねると、
リーダーらしき若者が「でもっ… これくらいは想定していたことだし…」と、
そしてその言葉にかぶせるように他のメンバーのひとりが「やっ、でも死ぬかと思ったスよ!」と、
さらにもうひとりが小さな声で「穂高って、スゴいところスね……」と。
僕は黙ってみそ汁をストーブに乗っけて「コレ熱いから、気ぃつけて」とだけ言ってその場を去ったのですが、
内心では「オマエら、エー経験したなぁ!」と肩でも叩いてやりたい気持ちでありました。
そりゃあ小屋番としては小言のひとつでも言って、彼らの無謀さを諭すのが本当なのかもしれません。
でも僕はこういうちょっと無茶でアホな若者たちがけっこうキライではないのです。
(無自覚でエラソーなオッサンたちには困ったもんやと思いますけど)
そうした「死ぬほどの思いの酷い目に遭う」というのは、山をやる上でかけがえのない経験です。
凍えるような雨に打たれて、それでも必死の思いで冷たい岩を掴みながら歩いたその山は、きっと彼らの財産となるはずです。
今年も多くの方が穂高で命を落とされました。
その方々が無謀や無知のあげくにそうなったのかというと必ずしもそうではないと思うのです。
もちろん突き詰めれば、その方ご自身の些細な不注意や不用意が原因ではあるのでしょうけれど、
でもそうしたミスというものは彼方や私だっていつやらかしてしまうかわからない類いのものです。
僕よりはるかに優れた岳人たちが山で逝ってしまったことがそれを示しています。
経験を重ねるというのは想像力を働かせられるようになることだと思います。
そして想像力というのは他人の言葉ではなくて自らの体験こそが元となるものでしょう。
そのためには成功体験よりも手痛い失敗こそが血となり肉となるものです。
ただ昨今は人の失敗に対して厳しい世の中ですし、何より山での失敗は時として死という結果につながってしまいます。
だからそこが難しいところではあるのですけれど。
それにしても彼らの晩飯の食いっぷりは凄まじく、5合の飯を4人でペロリと平らげられたのには参りました。
まあそうして無事に着いた小屋で力一杯にメシを食ってくれるのは、小屋番としては嬉しいものでした。
今日は寒気が居残ったせいか、午前中から青空が広がったものの風が強く寒いです。

(2016/10/29 10:30a.m.奥穂岩峰湧雲)
さて昨日記した西穂からのお客さんについて。
結果からいうと無事に小屋へ到着されました。
午後2時頃に小屋へ着いた20代後半のその4人は皆ズブ濡れで、小屋へ入るなりぶるぶると震えながらストーブにかじりついておりました。
雪から氷雨に変わるというおよそ絶悪の条件の中、アルプス最難の縦走路を経てきたそれぞれの表情には「マジ死ぬかと思った」という怖れと、「生きててヨカッタ」の安堵が伺えました。
夕食の折に「どの辺で雪になった?」と僕が訪ねると、
「西穂越えて間ノ岳の辺りから…」と、ちょっとバツが悪そうにひとりが答え、
「天狗のコルから岳沢へ下りるエスケープって知ってた?」とさらに訪ねると、
「…知ってたんスけど、まぁイケると思って」と。
「そのあとジャンからロバ耳あたりキビしかったやろ?」とさらに訪ねると、
リーダーらしき若者が「でもっ… これくらいは想定していたことだし…」と、
そしてその言葉にかぶせるように他のメンバーのひとりが「やっ、でも死ぬかと思ったスよ!」と、
さらにもうひとりが小さな声で「穂高って、スゴいところスね……」と。
僕は黙ってみそ汁をストーブに乗っけて「コレ熱いから、気ぃつけて」とだけ言ってその場を去ったのですが、
内心では「オマエら、エー経験したなぁ!」と肩でも叩いてやりたい気持ちでありました。
そりゃあ小屋番としては小言のひとつでも言って、彼らの無謀さを諭すのが本当なのかもしれません。
でも僕はこういうちょっと無茶でアホな若者たちがけっこうキライではないのです。
(無自覚でエラソーなオッサンたちには困ったもんやと思いますけど)
そうした「死ぬほどの思いの酷い目に遭う」というのは、山をやる上でかけがえのない経験です。
凍えるような雨に打たれて、それでも必死の思いで冷たい岩を掴みながら歩いたその山は、きっと彼らの財産となるはずです。
今年も多くの方が穂高で命を落とされました。
その方々が無謀や無知のあげくにそうなったのかというと必ずしもそうではないと思うのです。
もちろん突き詰めれば、その方ご自身の些細な不注意や不用意が原因ではあるのでしょうけれど、
でもそうしたミスというものは彼方や私だっていつやらかしてしまうかわからない類いのものです。
僕よりはるかに優れた岳人たちが山で逝ってしまったことがそれを示しています。
経験を重ねるというのは想像力を働かせられるようになることだと思います。
そして想像力というのは他人の言葉ではなくて自らの体験こそが元となるものでしょう。
そのためには成功体験よりも手痛い失敗こそが血となり肉となるものです。
ただ昨今は人の失敗に対して厳しい世の中ですし、何より山での失敗は時として死という結果につながってしまいます。
だからそこが難しいところではあるのですけれど。
それにしても彼らの晩飯の食いっぷりは凄まじく、5合の飯を4人でペロリと平らげられたのには参りました。
まあそうして無事に着いた小屋で力一杯にメシを食ってくれるのは、小屋番としては嬉しいものでした。
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冬の使者
- 2016-10-28 Fri 12:47:39
- 穂高
ついにと云うか、やっと云うか、ようやくという感じで山荘の庭が白くなり始めました。

(2016/10/28 11:00a.m.)
でも予報ではこの後雪は雨に変わりそう。
なのでこの雪が根雪とはならないと思います。
それにしても、今日西穂からこちらへ向かうとの予約の方が数名お見えだったのが気がかりです。
天気を読んで断念してくれていればいいけれど、朝は視界もまあまあだったので行動しているかもしれません。
この状況ではどんな高性能なウェアを着ていてもズブ濡れになって冷やされてしまいます。
途中でエスケープするか引き返すかしてくれていれば良いのですが。
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影穂高
- 2016-10-25 Tue 17:55:45
- 穂高
今日は雪景色をお届けできるかと思っていたのですが雨でした。
なかなか今年の穂高は白い衣装を纏いません。
で、今朝天気が崩れる前に見られたこんな光景を、

(2016/10/25 笠ヶ岳に映る影穂高)
左から、西穂、間ノ岳、天狗の頭、ジャンダルム、奥穂、涸沢岳、北穂と、その影が映っています。
おわかりになりますか?
なかなか今年の穂高は白い衣装を纏いません。
で、今朝天気が崩れる前に見られたこんな光景を、

(2016/10/25 笠ヶ岳に映る影穂高)
左から、西穂、間ノ岳、天狗の頭、ジャンダルム、奥穂、涸沢岳、北穂と、その影が映っています。
おわかりになりますか?
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小春日和
- 2016-10-24 Mon 16:33:56
- 穂高
朝夕はそれなりに冷え込みますが、日中は陽差しがぽかぽかと暖かな日が続いています。
「小春日和」ですね。

(2016/10/24 高山方面)
いつもの年なら所々雪もあったりして、一般の方にはもうなかなか難しい時期であるのですが、今年はまだ大丈夫。
で、なぜだかここしばらくは若い方の姿が目立っていて、こんな微笑ましい光景も目にしたりしました。

(2016/10/16 小屋前にて)
さて、今シーズンの小屋の営業終了もそろそろ秒読みになってきました。
今年は雪を踏まずに下山かなとも思っていたのですが、明日からは天気は下り坂となりそうです。
雪、降るかなぁ…
「小春日和」ですね。

(2016/10/24 高山方面)
いつもの年なら所々雪もあったりして、一般の方にはもうなかなか難しい時期であるのですが、今年はまだ大丈夫。
で、なぜだかここしばらくは若い方の姿が目立っていて、こんな微笑ましい光景も目にしたりしました。

(2016/10/16 小屋前にて)
さて、今シーズンの小屋の営業終了もそろそろ秒読みになってきました。
今年は雪を踏まずに下山かなとも思っていたのですが、明日からは天気は下り坂となりそうです。
雪、降るかなぁ…
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秋晴れ
- 2016-10-07 Fri 19:18:33
- 穂高
昨日、今日とやっとそれらしい秋晴れとなりました。

(2016/10/07 7:00a.m.)
今朝は空気もキュンと冷えて、それでもこれでやっと例年並みといったところでしょうか。

(2016/10/07 涸沢岳稜線にて)
日中はポカポカと暖かく、稜線歩きが気持ちよさそうです。
ただ明日の連休初日は荒れ模様の天気となりそうで、なんだか巡りが悪いですね。
でも明後日後半には回復との予報ですので、明日は山麓、明後日に稜線へという日程であれば秋山が満喫できそうです。
朝夕と日中の寒暖差が激しい時期です。
ウェアリングにはご注意を。

(2016/10/07 4:30pm 天気は下り坂)

(2016/10/07 7:00a.m.)
今朝は空気もキュンと冷えて、それでもこれでやっと例年並みといったところでしょうか。

(2016/10/07 涸沢岳稜線にて)
日中はポカポカと暖かく、稜線歩きが気持ちよさそうです。
ただ明日の連休初日は荒れ模様の天気となりそうで、なんだか巡りが悪いですね。
でも明後日後半には回復との予報ですので、明日は山麓、明後日に稜線へという日程であれば秋山が満喫できそうです。
朝夕と日中の寒暖差が激しい時期です。
ウェアリングにはご注意を。

(2016/10/07 4:30pm 天気は下り坂)
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