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2015年12月 Archive
冬至
- 2015-12-23 Wed 06:33:41
- 穂高

なんなんだろう、どうにも身体に力の入らないこの感じは、
それでいて時折怒りとも悔しさともつかない感情に大きな声でわめき叫びたくもなってしまう、
どう悲しんでいいのかさえよくわからない……
きっとあの笑顔を知る者は、みんな今こんな気持ちでいるのかもしれません。
谷口けいちゃんが、逝ってしまった。
今年は、
10月に山荘のバイトであったヤツが北鎌尾根で転落死、
11月には今井健司くんがヒマラヤ・チャムラン北壁で行方不明と、
晩秋の頃からの思いもしなかった仲間や友人の死に対して、
それをどう自分の中で捉えればいいのか、思い、考え、煩悶し、
何というか、このひと月ほどぼくはずっと立ち止まってしまっていました。
小屋を閉めて山を下りて以降、
やりたかったことや、やらねばならないことが目の前に山積みであったのに、
時おり襲ってくる"虚無”ともいうような空しい想いに、どうにも身体に力が入らなかったのです。
そんな中、無性に誰かと言葉を交わしたくなり、その相手として浮かんだ中のひとりがけいちゃんでした。
今井くんの事故の当時はけいちゃんもネパールにいて、帰国後の彼女からの短いメールに「ぜんぜん納得できない」とありました。
だから、また近々話そうやと言っていたのに。
そりゃあ、ないやろう…… けいちゃん
山に関わる以上、人はいつ何どきどうなるかわからない、ということは常々思っているつもりです。
でも、あのいつも元気いっぱいで、まわりの人たちまで元気にしてくれて、生の躍動に溢れるオーラを出しまくっていた彼女は、そんな負のイメージからいちばん遠いところの存在でした。
もうこの世の彼女がいなくなってしまったということを、ぼくはどう受け止めればいいのかまだよくわかりません。
悲しみとも、悔しさとも、嘆きとも、怒りともつかない、やりきれないこの感情を、今はまだ言葉にもできません。
彼女の想い出を記すことも今はしたくない。
だって心はぎしぎしいっているのに、ぼくの目からはまだ一粒の涙も出てはこないのですから。
ただただ頭の中でぐるぐると「嘘やろ?」って、「なにしとるんよ」って……
昨日は冬至でした。
冬至というのは、その日を境に陽光の回復と生命の再生を願う日であるそうです。
しかし寒さはこれからが本番であり、春を迎えるにはまだまだ厳しい寒さをくぐり抜けねばなりません。
彼女を喪った悲しみも、ぼくには今が底であるとは思えない。
今はただ、これから訪れる寒さにじっと耐えるしかないのでしょう。
彼女の魂はなお、山へ向かい続けていると信じながら。

(2015/06/08 穂高をゆく谷口けい)
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