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2015年08月 Archive
晩夏
- 2015-08-26 Wed 20:41:11
- 穂高
気がつけば八月もあと一週間たらずとなってしまいました。
お盆からこの十日あまりの間に穂高では3名の方が亡くなられています。
おひとりは涸沢槍で、他のおふたりはジャンダルム周辺でです。
涸沢槍で遭難された方は前回のブログエントリーに海月さんからのコメントにある(返信も成さず申し訳ございませんでした)その方です。
前夜は穂高岳山荘に宿泊された24才の単独行の女性の方でした。
現場は涸沢槍の長いクサリのトラバースのあたりと思われ、ステップとして踏んだ小さい岩が抜けたような痕が残されていました。
何気なくその岩に(まさかその岩が抜けるだなんて想像だにしなかったに違いありません)体重をかけた次の瞬間には空中に放り出され、百数十メートル下の斜面まで転落してしまったという事故でした。
24才というとちょうど私の長女と同い年です。
私は常日頃こうしてブログで穂高の素晴らしさと美しさ、そしてその危険と困難さをお伝えしようとしてきました。
でも、その亡くなった方の親御さんのことを想うと言葉もありません。
それで何というか、こうしてみなさまへ穂高をお伝えすることにちょっと立ち止まってしまったのです。
今までに携わってきた遭難現場では、たとえそれがどれほど悲惨なものであったとしても、どこか感情をシャットアウトして事にあたってきました。
でももしそれが自分の家族であったらなら、私はとても冷静にその場にいられたとは思えない。
人は他人事や対岸の火事には理性的でいられても、ひとたびものごとが自分の家族の事となると話が違ってきてしまいます。
例えば、もしも私の娘がひとりで穂高を歩きたいと言ったなら、あるいは奥穂〜西穂縦走をやりたいと言い出したなら、私はどんな言葉を口にすればよいのか…… ここしばらく、そんなことを考え続けています。
おそらくあの日、
きっと目映い朝陽の中を、北穂を、槍を、憧れの彼方を目指して歩みを進めていたであろう、彼女のことを悼みながら

(2015/08/23 朝陽輝く雲海へ)
お盆からこの十日あまりの間に穂高では3名の方が亡くなられています。
おひとりは涸沢槍で、他のおふたりはジャンダルム周辺でです。
涸沢槍で遭難された方は前回のブログエントリーに海月さんからのコメントにある(返信も成さず申し訳ございませんでした)その方です。
前夜は穂高岳山荘に宿泊された24才の単独行の女性の方でした。
現場は涸沢槍の長いクサリのトラバースのあたりと思われ、ステップとして踏んだ小さい岩が抜けたような痕が残されていました。
何気なくその岩に(まさかその岩が抜けるだなんて想像だにしなかったに違いありません)体重をかけた次の瞬間には空中に放り出され、百数十メートル下の斜面まで転落してしまったという事故でした。
24才というとちょうど私の長女と同い年です。
私は常日頃こうしてブログで穂高の素晴らしさと美しさ、そしてその危険と困難さをお伝えしようとしてきました。
でも、その亡くなった方の親御さんのことを想うと言葉もありません。
それで何というか、こうしてみなさまへ穂高をお伝えすることにちょっと立ち止まってしまったのです。
今までに携わってきた遭難現場では、たとえそれがどれほど悲惨なものであったとしても、どこか感情をシャットアウトして事にあたってきました。
でももしそれが自分の家族であったらなら、私はとても冷静にその場にいられたとは思えない。
人は他人事や対岸の火事には理性的でいられても、ひとたびものごとが自分の家族の事となると話が違ってきてしまいます。
例えば、もしも私の娘がひとりで穂高を歩きたいと言ったなら、あるいは奥穂〜西穂縦走をやりたいと言い出したなら、私はどんな言葉を口にすればよいのか…… ここしばらく、そんなことを考え続けています。
おそらくあの日、
きっと目映い朝陽の中を、北穂を、槍を、憧れの彼方を目指して歩みを進めていたであろう、彼女のことを悼みながら

(2015/08/23 朝陽輝く雲海へ)
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雨のお盆
- 2015-08-14 Fri 20:27:34
- 穂高
昨日、今日と今年のお盆休みも雨となってしまいました。
でも今日は雨の中登って見えたみなさんへは、こんな素敵な夕景のご褒美が。

(2015/08/14 6:45pm 穂高岳山荘よりの夕景)
周辺のガスを急速に吹き飛ばしてくれた冷たい風は、早くも夏の終わりを告げているかのようでした。
でも今日は雨の中登って見えたみなさんへは、こんな素敵な夕景のご褒美が。

(2015/08/14 6:45pm 穂高岳山荘よりの夕景)
周辺のガスを急速に吹き飛ばしてくれた冷たい風は、早くも夏の終わりを告げているかのようでした。
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夏山点描 2015
- 2015-08-05 Wed 21:36:13
- 穂高
「エエなぁ!」 と思う風景と出会っても、その時もっているのがカメラではなく鉄テコだったり、
奇麗な空を目にしても山のような洗い物に目の前に手を止めるわけにはいかぬ場合もあったりするので、
必ずしも思うものを撮れたわけでもありませんが、
それでも渾身の想いと願いでファインダーを覗き続けています。
では今年もいきます! 『ぼちいこ夏山特大号=夏山点描』!!
似たようなカットや稚拙な写真はご勘弁を。
この穂高の夏の空気が、どうか少しでも伝わってくれれば嬉しいかぎりです。

朝4時半、グラデーションの空の下、今日の目的地を目指して「さぁ、いくかっ!」

やがて昇った朝陽は、真夏になお残る残雪を紅に染めます。

夜明けに西の空を振り返れば、モルゲンロートに染まる岩肌とブルームーンの残月が浮かんでおりました。

知り合いのガイドさんが案内していた家族登山のみなさん。「おっ、ぼくっ、ヘルメットがキマってんなぁ!」

涸沢岳山頂と奥穂高岳。
陽射しは強くとも、吹き抜ける風はどこまでも爽やかな穂高の夏。

青い空と白い雲のコントラストは夏の最高の舞台背景です。

涸沢岳より奥穂稜線の馬ノ背付近を遠望。
西穂からの縦走でしょうか、あと少しで奥穂山頂ですよ!

穂高岳山荘前の石畳のテラスは、まさに雲上のオアシス。

めっちゃ、同意ですっ!!

夕暮れの空に想うのは憧憬か追憶か……

夕立の後には時にはこんな幸運に恵まれることも。
常念の頂からのびる虹。

登山者のみなさんが明日への夢につつまれる頃、夜空では星と雷が音もなく競演していました。
時に人の命を奪いもする穂高ですが、その雲上の世界には人々の歓びと感動が確かに存在します。
どうか、明日もよい天気でありますように!!!
奇麗な空を目にしても山のような洗い物に目の前に手を止めるわけにはいかぬ場合もあったりするので、
必ずしも思うものを撮れたわけでもありませんが、
それでも渾身の想いと願いでファインダーを覗き続けています。
では今年もいきます! 『ぼちいこ夏山特大号=夏山点描』!!
似たようなカットや稚拙な写真はご勘弁を。
この穂高の夏の空気が、どうか少しでも伝わってくれれば嬉しいかぎりです。

朝4時半、グラデーションの空の下、今日の目的地を目指して「さぁ、いくかっ!」

やがて昇った朝陽は、真夏になお残る残雪を紅に染めます。

夜明けに西の空を振り返れば、モルゲンロートに染まる岩肌とブルームーンの残月が浮かんでおりました。

知り合いのガイドさんが案内していた家族登山のみなさん。「おっ、ぼくっ、ヘルメットがキマってんなぁ!」

涸沢岳山頂と奥穂高岳。
陽射しは強くとも、吹き抜ける風はどこまでも爽やかな穂高の夏。

青い空と白い雲のコントラストは夏の最高の舞台背景です。

涸沢岳より奥穂稜線の馬ノ背付近を遠望。
西穂からの縦走でしょうか、あと少しで奥穂山頂ですよ!

穂高岳山荘前の石畳のテラスは、まさに雲上のオアシス。

めっちゃ、同意ですっ!!

夕暮れの空に想うのは憧憬か追憶か……

夕立の後には時にはこんな幸運に恵まれることも。
常念の頂からのびる虹。

登山者のみなさんが明日への夢につつまれる頃、夜空では星と雷が音もなく競演していました。
時に人の命を奪いもする穂高ですが、その雲上の世界には人々の歓びと感動が確かに存在します。
どうか、明日もよい天気でありますように!!!
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雷鳴
- 2015-08-03 Mon 21:00:12
- 穂高
今日はザイテングラートで一件と西穂付近で一件の死亡事故が起きてしまいました。
特にザイテンのは個人的に力を入れてルート整備をしてきただけにことさらに残念です。
もちろん我々の微々たる力で穂高から事故をなくすことなど出来ないことはわかっていますが、
こういう現実を突きつけられるたびに無力感みたいな何とも云えないものを感じます。

(2015/08/01 雷鳴の月夜)
ただ、このブログでも幾度か記してきましたが、
起きてしまった遭難に対処することはとても重要ですが、それと同じように大切なのが遭難を未然に防ぐことであろうと。
志ある者たちの懸命の救助が人の命を救うことはもちろんで、ぼく自身もその片隅に身を置いています。
ただ同時に、日頃の地道な登山道補修や雪切りが、あるいはひとつの石のステップやマーキングが、人知れず登山者の命を救うことを小屋番としてのぼくは知ってもいます。
世の中はそうした人知れず成された仕事の上に多くの安心や安全が保たれているはずで、ぼくが穂高の先人たちから教わり学んだのもそういうことでした。
ですからぼくは救助した人の数を誇るよりも、たぶん誰も知らへんであろう助けずに済んだ人々の存在を誇れるようでありたい。
夏山シーズンたけなわで、連日賑わうお客さんのお世話で正直手一杯なところは否めません。
それでも明日もわずかな時間に登山道の石一個でも直す、小屋を守るべく石垣を少しでも直す、というのは我々小屋番のささやかな矜持や誇りとちゃうんかなと。
時に思わず「あー しんどっ」とボヤきながらもです。
お亡くなりになられた方のご冥福を心よりお祈りいたします。
特にザイテンのは個人的に力を入れてルート整備をしてきただけにことさらに残念です。
もちろん我々の微々たる力で穂高から事故をなくすことなど出来ないことはわかっていますが、
こういう現実を突きつけられるたびに無力感みたいな何とも云えないものを感じます。

(2015/08/01 雷鳴の月夜)
ただ、このブログでも幾度か記してきましたが、
起きてしまった遭難に対処することはとても重要ですが、それと同じように大切なのが遭難を未然に防ぐことであろうと。
志ある者たちの懸命の救助が人の命を救うことはもちろんで、ぼく自身もその片隅に身を置いています。
ただ同時に、日頃の地道な登山道補修や雪切りが、あるいはひとつの石のステップやマーキングが、人知れず登山者の命を救うことを小屋番としてのぼくは知ってもいます。
世の中はそうした人知れず成された仕事の上に多くの安心や安全が保たれているはずで、ぼくが穂高の先人たちから教わり学んだのもそういうことでした。
ですからぼくは救助した人の数を誇るよりも、たぶん誰も知らへんであろう助けずに済んだ人々の存在を誇れるようでありたい。
夏山シーズンたけなわで、連日賑わうお客さんのお世話で正直手一杯なところは否めません。
それでも明日もわずかな時間に登山道の石一個でも直す、小屋を守るべく石垣を少しでも直す、というのは我々小屋番のささやかな矜持や誇りとちゃうんかなと。
時に思わず「あー しんどっ」とボヤきながらもです。
お亡くなりになられた方のご冥福を心よりお祈りいたします。
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