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2014年03月 Archive

風のように

  • Posted by: Hachiro
  • 2014-03-29 Sat 19:14:20
  • 穂高
岳沢小屋の野田君が鹿島槍で逝ってしまった。


事故の詳細は彼の先輩である岳沢小屋の坂本君がブログに記してくれています( …読んで涙出た )



彼とはひと月ほど前に山小屋関係の集まりで顔を会わせて、呑みながら少し語りました。
その前日は谷川岳の冬壁を登っていたそうで「寝不足で飲む酒は効きますねー」と雪焼けのたくましい顔で笑っていました。
先鋭的な山登りとは無縁の私であっても、今の彼がどれくらい高いレベルのクライミングを実践しているかは理解できました。
小屋番としての先輩である私をたててくれていたのか「はちろーサンっ、こんど石積み教えてくださいよー」などと言ってくれていたので、
「おぉー、今年は重太郎の道直しいっしょにやろうや。 …せやけどお前、頼むから死ぬなよ。」と口にしたことを覚えています。


彼は昨年、かの山野井泰史さんのパートナーとして南米ペルーでの登攀でピオレドールアジアを受賞、
情熱をもって真摯に山へ向うアルパインクライマーとして充実の時を迎えていたと思います。

ようやく登山者の賑わいもひと段落となった晩秋のある日、ひょっこりと彼が穂高小屋へ現れたことがあって、
聞けば岳沢からコブ尾根を攀じり稜線を越えて飛騨側へ下降しジャンダルム飛騨尾根を登り返して来たとのこと。
で、ご馳走したうどんを頬張りつつヤツが言うには、これから北穂経由で涸沢へ下り前穂北尾根を攀じって岳沢へ戻るというのです。
しかも「明るいうちに戻らなきゃ、サカモトさんに叱られるなぁー」とかのんきに言って。
まあ、これくらいでなきゃあ山野井さんのパートナーは務まらんわなぁとは思いつつも呆れ、そして感嘆したものです。


何ともあっけらかんとした素直な明るいヤツで、でも少々(かなりか…)ムチャをする、私的には大好きな若者でした。

きっと小屋番としても、これからを嘱望されていたはずです。


それがこんなに呆気なく、風のように稜線を駆けぬけて逝ってしまうなんて、ただただ残念としか言葉がありません。




真摯に山をやればやるほど死に近づくというのは、ある意味事実ではあっても、なんともやりきれない思いがします。


100624 前穂より_2
(前穂山頂より穂高稜線)





山は優しくも冷徹でもありません。人間の営みなど無関心に存在しています。
山は人を差別しません。ベテランであろうが、素人であろうが、等しく襲いかかります。
人間の計らいなど、山から見れば無に等しいのです。
経験も努力も必要です。
しかし、それは山で生きて行けることを保障しません。
そういう山の無関心さが私を快くさせてくれるのです。
経験を積むことは、自然を理解し手なずけることではありません。
臆病を重ねることです。
しかし、なかなかそれが難しいのです。
山登りにおいて、素人より経験者が多く遭難する理由はそこにあります。
私の知っている、そして尊敬する登山家は皆、山で死んでいます。
それが何よりの証拠です。
無謀だから死んだのではありません。
死んだから無謀なのです。

(和田 城志 「剱沢幻視行」 岳人09・1月号 より)











今年の道直しは、ちょっとツラい作業となりそうです。






























惜冬

  • Posted by: Hachiro
  • 2014-03-16 Sun 19:59:34
  • 穂高
近所のスキー場の営業が今日でおしまいとなりました。
(せめて今度の連休まではやってくれよ…)

ニュースではもう梅を通り越して桜前線も報じられるようになって、西の方では春一番も吹いたとか。



やれやれ、大好きな「冬」がいってしまいますね。



流葉より
(2014/03/15 ひだ流葉スキー場より)





私にとって「冬」は、雪やら氷やらとたわむれる楽しみの多い季節です。
(小屋番という仕事柄この時期しかそうそう休みがない訳で…)



深雪
(流葉スキー場 国設ゲレンデの深雪)




一角獣_04のコピー
(上高地中千丈沢の氷柱「一角獣」)




思えば、深雪を滑ったりアイスを登ったり…
その時々でコンディションがうつろい変わる、そんな遊びが好きなのです。
冬の象徴である「雪」の存在のような、はかなさみたいなものが何だか良い。




穏やかで暖かな春が嫌いなわけでもありません。

でも春の足音が強くなるにつれ、今年の山を思って心中穏やかではなくなって来ます。

その来るべきシーズンへの期待と不安は幾度経験しても慣れるということがない。
いや、経験すればするほどいろいろなことを考えてしまうものなのかもしれません。




春の訪れを喜ぶかたわらで、過ぎ行く冬を惜しむのは、
何も小屋番たちだけではないのではないかとも思うのですけれど。







































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