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2013年02月04日 Archive
立春に
- 2013-02-04 Mon 23:47:54
- 穂高
朝から春を予感させる雪解かしの雨が降り続いている。
そう今日は立春。
その二十四節気スタートの日に、素晴らしい本を読了することが出来た。

それは“Endurance” (「エンデュアランス号漂流」)というタイトルの本で、
先月にとある友人が「これ面白いよ」と貸してくれたのだが、
何気なく読み始め、そしてその冒頭を飾るある一文を読んでハッとした。
“In appreciation for whatever it is that makes men accomplish the impossible”
(人間に不可能なことを成し遂げさせる何ものかに感謝を捧げて 星野道夫訳)
ずっと以前、ぼくがまだ20代の頃、憧れであった星野道夫さんの著書「アラスカ 光と風」は自分にとってのバイブルのような本であった。
その中にマッキンレーにかかるオーロラを撮るために、たったひとりで真冬のアラスカ山脈でひと月を過ごすという章がある。
その旅で星野さんが持ち込んだ幾冊かの本のなかの一冊が“Endurance” であったのだ。
「アラスカ 光と風」にはこう記されている。
二月二十日 ともかく月を待つのみ。粘れ!
二月二十一日 絶好のオーロラ日和。快晴である。しかし夜二時まで待つがオーロラ出ず。
“Endurance” すばらしいノンフィクション。
“Endurance” は、前から友人に読むよう進められていた本だ。とうの昔に絶版になっているが、この本の話はいろいろな人から聞いていた。“Endurance” (忍耐)とは、一九一四年、アーネスト・シャケルトンを隊長としてノルウェーを出た南極探検隊の船の名前である。船は南極近海で氷にはさまれて座礁する。物語は、シャケルトンを隊長とした二十八人の隊員が、それからの半年間、南極海を小さなボートで漂流しながら生還するまでの記録だ。シャケルトンのこの旅は、アムンゼンやスコットに隠れてほとんど知られていないが、本当に信じられないストーリーだ。極限の状態に置かれた隊員の、心の動きがとても興味深かった。英語を読むのが遅いぼくが、ものすごいスピードで読み終えてしまったのだから、いかにおもしろかったかがわかる。
その文章を読んで“Endurance” という本にとても興味をもったのだが、その当時はまだ翻訳されていなかった。
その後、星野さんとともに本の記憶も心のどこかの引出しに入っていたのだが、
それが20年以上の年月を経て再びぼくの前に現れたというわけである。
で、手にした「エンデュアランス号漂流」はむちゃくちゃ面白かったです。
「求む男子。至難の旅。僅かな報酬。極寒。暗黒の長い日々。絶えざる危険。生還の保証なし。成功の暁には名誉と賞賛を得る。」
1914年にシャクルトンがロンドンの新聞に出したというこのアホみたいな広告、
それになんと五千名を超える志願者が殺到した(中には年若い女性も三名いた)そうである。
そしてシャクルトンを隊長とした28名の隊員達は南極大陸の横断というエクスペディションに挑むわけであるが、
なんと上陸する前段階で船が氷に閉じ込められて遭難してしまう。
何の通信手段もないこの時代、氷に閉ざされた地から生還するには、自力で脱出する以外、方法はない。
極寒の南極圏、次々と襲う危機的状況のなか誰が死んでもおかしくない、いや全員死亡も充分ありえる。
それが1年8ヶ月もの漂流の末についに28名全員が生還を果たす。
「エンデュアランス号漂流」が伝えるのは、単に極地でのサバイバルということだけではない。
圧倒的な自然の前では、人間など大海原に浮かぶ木片のようなものに過ぎない。
しかしそのか弱く小さな存在が、生への強い意思を持つとき、信じられないような力を発する。
情熱、勇気、判断力、決断力、プライド、マネジメント、リーダーシップ、ユーモア…
きっとそれはぼくたちが山との関わりで感じるものと同じ種類のもの。
そんなかけがえのない生の輝きを得たいがために、ぼくたちは山へ登るのだろう。
「絶望的な状況で、彼らは極地の暗黒の冬を越す。その日記の中に、ある晩オーロラが現れ、全天を舞うシーンがある。おそらく生きては戻れない運命の中、彼らはどんな思いでその光を見つめていたのだろう。……人はいつも無意識のうちに、自分の心を通して風景を見る。オーロラの不思議な光が語りかけてくるものは、それを見つめる者の、内なる心の風景の中にあるのだろう」 (星野道夫)
そう今日は立春。
その二十四節気スタートの日に、素晴らしい本を読了することが出来た。

それは“Endurance” (「エンデュアランス号漂流」)というタイトルの本で、
先月にとある友人が「これ面白いよ」と貸してくれたのだが、
何気なく読み始め、そしてその冒頭を飾るある一文を読んでハッとした。
“In appreciation for whatever it is that makes men accomplish the impossible”
(人間に不可能なことを成し遂げさせる何ものかに感謝を捧げて 星野道夫訳)
ずっと以前、ぼくがまだ20代の頃、憧れであった星野道夫さんの著書「アラスカ 光と風」は自分にとってのバイブルのような本であった。
その中にマッキンレーにかかるオーロラを撮るために、たったひとりで真冬のアラスカ山脈でひと月を過ごすという章がある。
その旅で星野さんが持ち込んだ幾冊かの本のなかの一冊が“Endurance” であったのだ。
「アラスカ 光と風」にはこう記されている。
二月二十日 ともかく月を待つのみ。粘れ!
二月二十一日 絶好のオーロラ日和。快晴である。しかし夜二時まで待つがオーロラ出ず。
“Endurance” すばらしいノンフィクション。
“Endurance” は、前から友人に読むよう進められていた本だ。とうの昔に絶版になっているが、この本の話はいろいろな人から聞いていた。“Endurance” (忍耐)とは、一九一四年、アーネスト・シャケルトンを隊長としてノルウェーを出た南極探検隊の船の名前である。船は南極近海で氷にはさまれて座礁する。物語は、シャケルトンを隊長とした二十八人の隊員が、それからの半年間、南極海を小さなボートで漂流しながら生還するまでの記録だ。シャケルトンのこの旅は、アムンゼンやスコットに隠れてほとんど知られていないが、本当に信じられないストーリーだ。極限の状態に置かれた隊員の、心の動きがとても興味深かった。英語を読むのが遅いぼくが、ものすごいスピードで読み終えてしまったのだから、いかにおもしろかったかがわかる。
その文章を読んで“Endurance” という本にとても興味をもったのだが、その当時はまだ翻訳されていなかった。
その後、星野さんとともに本の記憶も心のどこかの引出しに入っていたのだが、
それが20年以上の年月を経て再びぼくの前に現れたというわけである。
で、手にした「エンデュアランス号漂流」はむちゃくちゃ面白かったです。
「求む男子。至難の旅。僅かな報酬。極寒。暗黒の長い日々。絶えざる危険。生還の保証なし。成功の暁には名誉と賞賛を得る。」
1914年にシャクルトンがロンドンの新聞に出したというこのアホみたいな広告、
それになんと五千名を超える志願者が殺到した(中には年若い女性も三名いた)そうである。
そしてシャクルトンを隊長とした28名の隊員達は南極大陸の横断というエクスペディションに挑むわけであるが、
なんと上陸する前段階で船が氷に閉じ込められて遭難してしまう。
何の通信手段もないこの時代、氷に閉ざされた地から生還するには、自力で脱出する以外、方法はない。
極寒の南極圏、次々と襲う危機的状況のなか誰が死んでもおかしくない、いや全員死亡も充分ありえる。
それが1年8ヶ月もの漂流の末についに28名全員が生還を果たす。
「エンデュアランス号漂流」が伝えるのは、単に極地でのサバイバルということだけではない。
圧倒的な自然の前では、人間など大海原に浮かぶ木片のようなものに過ぎない。
しかしそのか弱く小さな存在が、生への強い意思を持つとき、信じられないような力を発する。
情熱、勇気、判断力、決断力、プライド、マネジメント、リーダーシップ、ユーモア…
きっとそれはぼくたちが山との関わりで感じるものと同じ種類のもの。
そんなかけがえのない生の輝きを得たいがために、ぼくたちは山へ登るのだろう。
「絶望的な状況で、彼らは極地の暗黒の冬を越す。その日記の中に、ある晩オーロラが現れ、全天を舞うシーンがある。おそらく生きては戻れない運命の中、彼らはどんな思いでその光を見つめていたのだろう。……人はいつも無意識のうちに、自分の心を通して風景を見る。オーロラの不思議な光が語りかけてくるものは、それを見つめる者の、内なる心の風景の中にあるのだろう」 (星野道夫)
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