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2010年06月13日 Archive
梅雨入り前
- 2010-06-13 Sun 17:29:51
- 穂高

(2010/06/13 梅雨入り直前の青空)
今年は梅雨入りが遅れていますね。
山荘前も例年よりずいぶん残雪が多いです。(穂高全域そうですが)
この雪を融かすのは梅雨の雨風で、晴れ続きだとあまり雪は減りません。
うっとしい梅雨ですが、高山植物やライチョウの生育には欠かせないものですし、
何よりこの雪では、夏山登山に支障がでます。
7月の「海の日」までには各登山道を整備していきますが、今年はかなりの残雪が予想されます。
お出かけの際には事前にルート状況をご確認下さい。
ところで今日、悲しいことに死亡事故のレスキューを行いました。(正確には、発生は一昨日で今日発見)

一昨日に涸沢小屋から奥穂へピストンされる予定の68才の男性が、昨日になっても戻らないとのことで、今朝から長野県警のヘリが捜索しておりました。
お昼頃、ザイテンで通りがかりの登山者が行方不明者のものと思われるピッケルを発見。
長野県警警備隊2名、涸沢小屋より2名、穂高岳山荘より2名の計6名でザイテングラード周辺のシュルンドを捜索、ザイテン取り付き下部のシュルンドの中に御遺体を発見し、収容活動したものです。
おそらく下山中にザイテン上部の急な雪稜から滑落したものと思われます。
決して亡くなられた方にムチ打つつもりはありませんが、
とても残念だったのは、その方が装着されていたアイゼンが6本爪であったこと。(片側のアイゼンは滑落中に外れてしまったようでした)
涸沢までならいざ知らず、穂高では4本爪や6本爪のアイゼンはほとんど役に立ちません。
急峻な雪を登り降りするのにいちばん必要な、つま先とかかとに爪のないアイゼンでは無意味なのです。
ですので穂高の雪を歩くのなら、10本や12本爪のしっかりとしたアイゼンをお持ち下さい。
そしてアイゼンを使うならピッケルも必要です。
慣れた方であればストックで済ませられることもありますが、ピッケルがあるに越したことはありません。
例えば、岳沢から吊尾根経由で奥穂へ登る場合、紀美子平の奥穂側に急峻な雪渓のトラバースがたいてい7月中下旬まで残ります。たとえそれがたいした距離でなくとも、その雪渓に道が切ってない場合はアイゼンなしでの通過はとても困難です。
たどるコースの9割9分がアイゼンなしで済ませられても、たった1カ所のトラブルが穂高では致命的なものになりかねません。
あまり認識されないことかも知れませんが、これから夏へ向けて雪の状態はだんだん締まって硬くなっていきます。
ある程度の斜度まではスプーンカットを利用して歩くことも可能ではありますが、夏の雪渓は容易にステップが切れるものではありません。
穂高ではどのルートを歩くにせよ、少なくとも7月の海の日まではアイゼンは必携だと思います。
僕は遺体収容に携わるたび、ある種の想いを抱きます。
誰ひとり、この山へ命を捨てに来る方はいないはず。
そしてほとんどの遭難が、ほんの少しの注意で防げたはずのものばかりです。
北穂小屋の設立者である小山義治氏の、
「ほとんどすべての遭難は人間の側に原因がある」との言葉は、
僕がことある度に思う自分への戒めです。
人と山とが関わる以上、
そして山の方が人間より遙かに大きく偉大な存在である以上、
遭難事故がなくなることはないでしょう。
それでも、
僕はこの愛する穂高で人が命を落とすことはやりきれない。
この度亡くなられた方へ、心よりご冥福をお祈りいたします。
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