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夏山開幕

  • Posted by: Hachiro
  • 2017-07-15 Sat 21:10:37
  • 穂高
今年の夏山はいきなりのレスキューで幕を開けました。
それも現場ビバークを強いられるけっこうショッパイやつ。

要救助者は槍ヶ岳から穂高を目指した韓国グループの方で、頭部裂傷など瀕死の大怪我でした。
かなりの出血もあったしその様子からひと晩を持ちこたえてくれるか危ぶまれたのですが、なんとか生還への朝を迎えることができました。


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(2017/07/15 5:54 a.m.)



長い夜、意識の有無の確認のために要救のおじさんに時々話しかけるのですが、
カタコトの日本語で「ワタシ、ダイキレットハダイキライ」とか言うので、
「や、ここはダイキレットじゃなくてカラサワヤリっすよ」と答えると、
「アー、、、カラサワヤリモダイキライ」とか、なんだかボケてるのか真面目なのかよくわからないようなやりとりが続きました。
もちろんゼーゼーと時折苦しそうだしモウロウとしていることはわかっているのですけれど、そう簡単にアッチの世界へいってもらうわけにもいかないのでともかくも声をかけるのです。
そして、そんなやりとりの幾度目かに「そういやぁ、おじさん歳いくつっすか?」と尋ねると「ごじゅううさんさいデス」との返事。
(「なんや、もっと歳かと思ってたらオレとほぼ同い年やん…」)、
続けて「奥さんとか子供さん韓国におるんスよね?  ほらこんなとこで死んどる場合とちゃいますやん、ゼッタイ帰ったげなあかんですよ」と。
すると私の言葉がわかったのかどうか、血まみれで腫れ上がった瞳の奥に何かを訴えかけるような光が見てとれました。


寒さに震えた長い夜もようやく明け、やがて常念岳から昇った力強い朝陽が私たちを照らします。
そして彼方からついに聞こえてきたヘリの音が耳に入ったのでしょう。
おじさんは私たちへの感謝を示そうするのか、しきりに胸で手を合わせようとします。
でも折れた手はあまりうまく動かないようで、そっとその手を握ってやるとおじさんは驚くほどの力で私の手を握り返してくるではないですか、
ふいに私の胸に熱いものがこみ上げ「よしゃあ! 帰れる、帰れるぞ‼︎ おじさんっ、、、 よーがんばった!」と思わず涙がにじんできてしまいました。


おじさんを乗せて病院へと向かってくれたヘリを見送り、重い体を引きずるようにして小屋へ帰り着きました。
やがて警察を通じて「集中治療室にて無事一命を取りとめた。頭のケガも今のところ脳への明らかな異常はない模様」との知らせが入りました。
現場出動した者も、小屋を少人数で苦労して切り盛りしてくれたスタッフも、一同「いやぁ〜 よかった! よかった、よかった!」と。
(レスキューってなにも現場に行った人間だけが行うものでもないんです。それはいつも事に携わる者すべてでの総力戦です)

だから、ほんまによかったです。

そしてほんとうに思うのは、我々が力を尽くした以上に、あのおじさんがよくがんばってくれたということ。


悲しいことに穂高では毎年多くの命が失われています。
これからの夏にも、穂高ではこうした遭難がどうしようもなく起きてしまうでしょう。
でもあたり前の話ですが、誰も遭難しようとして山へ登る人はいません。
そして事故というものは、ビギナーやベテランを問わず起こり得るのです。
今回の韓国のおじさんはパーティのリーダーであって、これまでに幾度も槍穂縦走の経験のある方でした。
つい先日には友人のやはりベテランが北穂南稜のなんでもないところであわやの事故に遭いました。

こうして偉そうなことを記している私だって、いつ何時やらかしてしまうかわかったものではない。
「いちばん信用ならないのは自分だ」ということを繰り返し己に言い聞かせなければなりません。

だから、
慎重にならなければいけない。
謙虚でなければいけません。
山を畏れなければならないのです。


何も人は死ぬために山に登るのとちゃうんです。
生きるために登るんです。
きっと皆それぞれが、ふだん日常の暮らしでは得ることのできない自分の命が精一杯に輝く時を求めて、山に身を置くはずなのです。



どうかこの夏、あなたの(そして私の)そのいのちがめいっぱいにこの穂高で輝かんことを…





120719 涸沢岳より奥穂2
(涸沢岳より、夏の朝陽輝く奥穂高岳)










































































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