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ザイテングラート

  • Posted by: Hachiro
  • 2016-09-10 Sat 14:40:11
  • 穂高
警察庁が昨日、今年7〜8月の山岳遭難が660件・753人に上ったと発表しました。
統計の残る1968年以降で最多であるそうです。

そして穂高では、今月に入って立て続けに、もう3名もの方が亡くなられています。
しかもその発生場所は全て奥穂へのメインルートであるザイテングラートでです。

このことは岳沢小屋の坂本くんも記してくれています。



160721_ザイテン_t
(2016/07/21 ドローンにて撮影)


赤丸がついているのが事故発生場所で、すべて下りでの滑落によるものでした。

最初に起きた9月2日の事故は、僕が個人的に通称「ハイマツコーナー」と呼んでいる場所であり、数年前まで死亡事故の絶えなかった場所です。
ちょうど90度方向を変える一見すると何でもない場所なのですが、ブッシュに覆われた片側はスッパリと切れ落ちていて「どうってことはないけれど、墜ちれば致命的」という地形です。
他の場所と比べて特別難しいとも思えないその場所で、なぜか毎年毎年命を失う方が後を絶たず、救助関係者も首をひねるばかりでした。
それを「こりゃあ、なんとかせなあかんやろ !?」ということで、3年前に岩場の上に石を組んで歩きやすくし、またクサリも設置したのです。
そこを通過するのにクサリが必要であるとは本当は思えなかったのですが、その場所が「危険箇所である」ということを示す意味であえて設置に踏み切りました。
僕個人としては、今以上に穂高にクサリやハシゴを増やすのは反対ですし、むしろすべて無くしてしまう方がいいのではないかくらいに思っています。
でもそうした個人の思いと、現実に自分が成すべき仕事とは別です。
そして幸いなことに、その処置工事以降その「ハイマツコーナー」での事故はピタリと無くなったのです。
なので内心僕は(「これぞ小屋番の、プロフェッショナルの仕事っちゅうもんやゾ ⁉︎」)とひとり悦に入っていたのです。

ところが今回とうとうその場所で事故が起きてしまいました。
他の場所ではともかく、もうあの「ハイマツコーナー」では墜ちようにも墜ちられんやろう、くらい思っていたので、
……なんというか、猛烈にショックです。




そして2件目の9月6日の事故では、お亡くなりになった方の収容作業にあたりました。

雨の中を息急き切って駆けつけた先に、すでに亡骸となってしまっている方を見つけたときの虚脱感は、いつもながらやりきれません。
穂高に永く身をおいていると、死は嘘のように身近にあるし、それが突然訪れることも、どんなにあっさり訪れるのかも知るようになってしまいます。
いくら遭難現場の経験を積み、事故発生や救助作業そのものに慣れることはあっても、死そのものに慣れるということはありません。
死はいつだって悲しいし、無力感に満ち、言葉もわいてこないものです。

ただただ、お亡くなりになった方へ心の中で掌をあわせながら、濡れたカッパを引きずるように重い足取りで仲間たちと小屋へともどりました。


160906 ザイテンレスキュー
(2016/09/06 ザイテンでの救助活動中の長野県警ヘリ「やまびこ1号」)




昨日収容された方は、状況から判断するに事故後数日が経過していた模様です。
おそらく9月7日に涸沢から奥穂ピストンの帰りにあずき沢へ滑落したものと思われます。
やりきれないことに、この方の死因は外傷ではなく低体温症とのこと。
つまり滑落後しばらくは生存していたようなのです。
ところがあの日は台風が接近中だったため登山者の姿は極端に少なく、事故の目撃者はありませんでした。
もしもその方が単独ではなく、また何らかのSOSの手立てがあったならと悔やまれます




わずか1週間たらずの間にいったいなぜ?

そう思わずにはいられません。

たしかに今までもある特定の場所で事故が連続したことはあります。
我々山の人間は、そうしたことを「誰かが呼ぶ」とか「あの場所は呼ばれてる」とかオカルトめいたことを口にすることはあります。
実際に何件も事故のあった所の下の雪渓にオロク(遺体)があったなんてこともあるにはありました。

でも、今回は同じザイテンとはいえ実際の場所はさまざまです。
共通しているのはいずれもが下山中であったということと高齢者(おひとりは僕と同じ50代ですからこう記すにはちょっと抵抗ありますけれど)であったということ。


あえてひとつ外的要因を考えるとするなら、今年の残雪の少なさと多雨傾向は挙げられるかもしれません。
早い時期に雪が消えてしまったことによって、登山道が雨にさらされる時間が今年は長く、したがって脆くなっている場所が多い、ということです。
でも実際の感じとしては、ひと夏を越した現在では例年と比べて状況がそう特別であるとはあまり思えません。


やはり遭難がこれだけ多いということの原因は、山ではなくて人間の側にあると考えるのが正しいのでしょう。



先週も今週も、週末になると好天に恵まれているためか、今日も小屋は登山者で賑わっています。

どうか、明日みなさんが踏み出すその一歩に、おひとりおひとりがご自分の命をかけた注意を注いでいただきたいと思うのです。


















































Comments: 1

森の熊五郎 URL 2016-09-10 Sat 20:00:01

8ちゃん、小屋番は色々なことが有り本当に大変な仕事ですよね。だけど、ザイテンで3名も亡くなられるなんて以前では考えられない事でしたですね。
私も、今年のG/W明けに穂高を目指しましたが天候が悪く涸沢でギブアップ、年齢を考えれば山に迷惑をかけたくない山で死にたくないと思い早々と退散でした。残り2ヶ月足らずですが今年も無事に小屋閉めを終えることを願います。

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