Home > 穂高 > 遭難事故

遭難事故

  • Posted by: Hachiro
  • 2011-08-08 Mon 18:12:49
  • 穂高
空0808



悲しいことに先週末、穂高で遭難死亡事故が立て続けに起こってしまいました。
何というか、あり得ないことに何れも人工落石が原因です。

一件目は涸沢槍、二件目はザイテングラード

二件目のザイテンの事故は亡くなったのが62歳のおじいちゃんと8歳のお孫さんだったこともあり、
マスコミでもかなり大きく報道されたようです。

どんな命でも、その価値に軽重などはないはずなのですが、
やはり8歳の子供さんが、と聞くといたたまれない思いがします。

この2件の事故の特徴は加害者(つまり落石を落とした方)が特定されているということ。
山の遭難事故では珍しいケースだと思います。
警察も実況検分を実施し、過失致死事件として扱われるようです。

もちろんこの事故でお亡くなりになった方々へは、
心から哀悼の意を表したいと思うのですが、
一方で加害者となってしまった人たちのこともどうにもやりきれない。


皆、心に安らぎや喜びを求めて山へ訪れるのに、
それがこんなも悲しくつらいことになってしまうなんて…




とても哀しいことに、
穂高で命を失う人は平均すると年間10名を越えているかもしれません。


でも愛する山がそんな哀しい山であってはならない。


そんな想いを抱いて山に携わる多くの者たち、
遭対協の常駐隊員、県警救助隊や警備隊、ヘリ航空隊、山岳ガイド、小屋番…
みんな、時には起こってしまう死亡事故に無力感に苛まれながらも、
日々「山の安全」を守ろうと懸命に力を尽くしています。

そして実際に少なからぬ人々がその者達に救われています。


例えば先日の滝谷での奇跡的な救出劇。

北穂から涸沢岳へ向かっていた30歳前後のご夫婦のうち奥さんが縦走路から滑落、
約150mほどの急斜面を転がり落ちて骨折等の重傷を負ったというもので、
同行の旦那さんは何とか奥さんの所まで降りて救助を求めているとのこと。

知らせを受けた岐阜県警山岳警備隊の穂高常駐隊員3名が現場へ急行しました。

現場は滝谷C沢奥壁の断崖絶壁まであとわずかいう際どい場所で、
もう3m程も転がれば間違いなく命はないというギリギリの所でかろうじて止まっていました。

縦走路からおよそ5ピッチ、ロープを使って斜面を下降していきますが、
岩屑だらけの脆い斜面ではともすれば遭難者へ落石を落としかねず、細心の注意が必要です。

滝谷の真っ直中から重傷の奥さんを救うには、何としても現場から直接ヘリ収容したい。

迫り来るガスが視界を閉ざそうとする中で、
時間とも勝負しながらの懸命のレスキューとなったのです。

無線中継のために涸沢岳西尾根にいた僕の視界からも、時折現場は雲にかき消されてしまいます。


そんな中、岐阜県警航空隊のヘリ「らいちょう」が、
まさにギリギリのタイミングで滝谷の絶壁から奥さんを収容することに成功しました。
(その後続けて旦那さんをピックアップしようとしたときにはもう視界が効かなくなっていたほど)

無線を傍受していた僕も、その瞬間には「 っしゃぁぁぁ!!!」と思わず声が出てしまった。


滝谷レスキュー
(2011/08/03 北穂・滝谷で救助活動中の岐阜県警ヘリ「らいちょう」)



警備隊の中でも最古参のベテラン隊員の的確な判断と対応、
悪条件にもひるまない航空隊のヘリオペレーション、
現場でのサポートをかって出てくれた山岳ガイド、
2時間に及ぶ救助活動中に縦走路で文句ひとつ言わず待機してくれた登山者たち、

そんな関わった人たちすべての気持ちと技量が為し得た救出劇でした。



病院へ収容された奥さんの無事を知らされて、旦那さんは声をあげて泣いていたそうな。

…ほんとうに、よかった。







たぶんほとんど誰にも知られることもない「山猿たち」の懸命の活動とともに、
たぶんほとんど誰にも知られることなしに、山の悲喜劇は繰り広げられてゆきます。


でもそんな人間の営みなぞどこ吹く風で、ただ穂高は今日もそこに在る。

そういう山の無関心さというか寄る辺なさみたいなものが、
時に悔しくもあり、時に心地よかったりもして、
「人が生きている」ということを、何かことさらに感じさせられます。
































Comments: 14

あしたからがんばるひと URL 2011-08-15 Mon 21:53:12

8月8日 山荘にお世話になりました。
前日の事故は下山後知りましたが
笑顔のスタッフの方々に癒されました。
また来年行くと思います。

Hachiro URL 2011-08-13 Sat 09:08:20

この記事へたくさんの方からコメントをいただき、ありがとうございました。

ひとつひとつに返信できず申し訳ございませんが、とても心あたたまる真摯なものばかりで深く感謝いたします。

このお盆休みに山へお出かけの方も多いのではないかと思いますので、どうぞお気をつけて!

良い山旅を。

だジィ URL 2011-08-11 Thu 10:25:21

はじめまして。
読んでいて涙が出てきました。
僕も山をなめていたところがあったと反省させられました。
この記事に出会えてよかったです。
有難うございました。

PTYAMASAKI URL 2011-08-11 Thu 10:20:46

>Hachiroさんへ

大キレット攻略の細かいアドバイスありがとうございます。非常に有りがたいです。父にも見せていい思い出を作りたいと思います。

kichin URL 2011-08-10 Wed 22:25:15

こういう記事に出会えて良かったです。
読んでいてなんとも言えない感情になりました。
そしてたくさんの人に読んでもらいたいと思いました。
もっとこういう記事が目に触れることができたらいいのにと
思います。
ありがとうございます。

「大切に生きるってことは危険を冒さずに生きるってこととは違う。」
という言葉、なんだかズンときました。

KAKOQ URL 2011-08-10 Wed 20:20:38

>Hachiroさん
心温まるコメント、ありがとうございます。

>でも大切に生きるってことは危険を冒さずに生きるってこととは違う。

そうなんですね。
「もう大人しく生きていこう」とも思いましたが、病院の看護師さんにも、「怪我を怖がったら何もできないからね」と言われました。
今回のことを反省しながらも、また、いろんなことにチャレンジできる人生にしたいと思います。
おそらく運はすべて使い果たしてしまったので(笑)、世の中に還元しながら一生懸命生きていきたいです。

最後に。今回のことがあっても山は大好きなので、またいつか、きちんと経験を積んで、穂高、チャレンジしたいです・・・!

KOISAN URL 2011-08-10 Wed 13:27:00

落石で、あわやという話。剣岳の長次郎尾根の岩場を登っていた時のことです、トップの人が通過し私がセカンドで登って行くと、どうしてもそこに足を乗せなければ通過できない所に、レンガ大の浮石がありました。細心の注意を払って通過したが、技量が足りなかったか、落としてしまった。 「らーーーく!」 と叫んだが石はまっすぐに「ゴジさん」(あだ名です)の方へと落下して「ぎゃー!」っと叫んではいるが岩に張り付いている状態で一歩も動けない。運よく、2m位手前でバウンドし頭の上を越して行きました。亡くなられた方も気の毒ですが、石を落とした方もわざとでなくても責任を感じるでしょうね。

yama_pom URL 2011-08-10 Wed 12:46:20

石鎚山の頂上山荘の予約受付等に携わっている者です。

今回の祖父と孫の事故は、遠い山の事故ではなく同県人の事故として大きなショックを受けています。
そしてこの記事を読み、山に関わる人達の思いも知ることができ有りがたく思います。

石鎚山は日本アルプスと比べれば、「安全な山」のイメージがあるようで、「日本アルプスにも何回も言ってるから大丈夫」と言う意味の声を聞くことがあります。
確かに、地元の小学生が遠足に来る山ですが、どこの山とも同じに、落石があり、雪崩が発生します。
自然災害による、人的被害はここ数年発生していませんが、登山者の怪我・病気・遭難により、救助隊が派遣されることが年数回は発生しています。

石鎚山は、参拝を目的とする人が多いので、他の山小屋とは運営方針に違いがあるかもしれませんが、安全で楽しい登山をして頂きたいと思う心は同じだと思います。
足りない者です。諸先輩の言葉で勉強していきたいと思います。
場違いなコメントかもしれませんが、皆さんの思いに触れ、書き込ませていただきました。

おおひら URL 2011-08-10 Wed 12:25:13

体調はいかがですか?
12日から診療所班でお世話になります。
学生が大勢行くので、ご迷惑をおかけすると思いますが、よろしくお願いいたします。
初心者の学生もいるので、今回のこの事故のことを話していこうと思っています。

Hachiro URL 2011-08-10 Wed 12:12:01

KAKOQ  様

いやはや、まさかあの事故のご本人さまからコメントをいただけるとは!!
なんかちょっと感動してしまう。


いやぁ~、、、KAKOQ さん、ほんとうに、よかった。

何というか…    生きていてくれて、ありがとう! って。


実はぼくも夏のはじまりの頃、仕事の作業中に事故に遭ってしまいまして、
まったく命を失わなかったのが奇跡的で、その時も多くの仲間の世話になりました。

感謝や安堵感とともに思ったのは、
自分が「生きている」のではなくて「生かしてもらっている」ということ。

せっかく助かったのだから大切に生きたいですよね。

でも大切に生きるってことは危険を冒さずに生きるってこととは違う。

人が山と関わるのは、
困難さや危険や厳しさがあるがあるからこそ、
そこに身をおくことでその生が輝くからだと思うのです。

経験から何かを学ぶのは大切だと思いますが、
誰も事故をおこしたくて山にくることはありません。


だからゆっくりと怪我を癒して、きっとまた穂高へいらして下さい。




Hachiro URL 2011-08-10 Wed 08:55:02

PTYAMASAKI 様

コメントありがとうございます。

確かに穂高は険しくて危険も多い山です。
でも「だからこそ」の魅力があるのも確かですよね。

大キレット、ぜひ挑戦してください。
「ー天候と体力と相談しながらー」のお気持ちがあれば大丈夫です。

幾つかアドバイスをさせていただければ、
大キレットは南岳→北穂方向で歩く方が、ほとんどの難所が登りになるので良いと思います。
(何より穂高が迫ってくる感じが素晴らしい)
核心とされる長谷川ピークや飛騨泣きの通過は、高度感はありますが慎重にホールド・スタンスを決めていけば問題ないと思います。
一番注意が必要なのは「A沢のコル」から北穂への登り。
この急登は岩が脆く浮き石も多くあり、ルートが上下方向に何度も交差していて、先行パーティがいるときは落石のリスクがとても高くなります。
もちろん自分たちが落石を落とすことも考えられるので、もしも真下に後続者が入ってくるようなら、声をかけて待ってもらうか、自分たちが動かないようにするかの対処が必要となります。

落石は、自分たちが落とさないのはもちろん、落とされる可能性の在る位置に居ることを避けることも大切です。



どうか「大キレット」の山旅を満喫されるよう、お祈りしております。





hekoheyko URL 2011-08-09 Tue 21:54:28

KAKOQ さん、コメント拝見してじ~んときました。
ザイテンでの事故のいたたまれなさや、いろんな想いの中で、奇跡的に軽傷ですんだ KAKOQ さんのコメントは
なんというか、(あ~ よかったぁ・・・)と、うれしくなりました。

山とか空とかって、おおきいですよね…

軽傷とはいえ、お大事にしてくださいね。

KAKOQ URL 2011-08-09 Tue 20:48:30

こんにちは。突然の書き込み失礼します。
私はブログに書かれている北穂高岳での事故で救出していただいた本人です。
一昨日、岐阜県の病院から無事に退院し、自宅に戻ってきました。
病院で調べたところ、脳に異常はないどころか骨折はほぼゼロで打ち身と切り傷のみ。お医者様や県警の方も驚くほどの軽傷でした。
いまだに、あのような場所で滑落してなぜ止まってくれたのか、こんなに軽傷で済んだのか不思議で仕方なく、本当に奇跡だったと思っています。
そして、あとから主人などに話を聞けば聞くほど、あの事故で支えてくださった方の多さ、そして、その誰ひとりでも欠けていたら、自分はあのとき救助のヘリに乗ることは出来なかったのだと、ただただ感謝の気持ちでいっぱいです。
今回の事故は自分たちの計画の甘さや、山の怖さを十分に考えていなかったことなど、反省だらけです。みなさんにご迷惑とご心配をおかけしてしまったこと、本当に申し訳ないです。
ただ、あんなに怖い思いをしておきながらも、救助のヘリを待っているとき、前方の景色をみて「綺麗だなあ」などと考えていました。
このブログの最後のところ、「人間の営みなどどこ吹く風で・・・」とても共感します。
長文になってしまいましたが、今回、色々とご尽力いただいて命を助けていただいて本当にありがとうございました。この場を借りてのお礼、失礼いたします。

PTYAMASAKI URL 2011-08-09 Tue 12:55:30

こんにちは!いつも欠かさず拝見させていただいております。

今回のニュース、私も新聞やネットで拝見しました。私事で恐縮ですが、お盆に58歳になる父親と大キレット~奥穂高~前穂高と登山に行く予定にしており、同じく家族で山を楽しみに来ていた方々が遭難されたと聞くと、少し、今回の登山も怖く感じています。父親が死ぬまでに通りたい大キレット、私もこのブログで「春の夜空」をみて穂高にあこがれ今回の登山を大変楽しみにしております。これからも楽しい登山を続けるため、今回と同じようなことが起こらない(起こさない)ように天候と体力と相談しながら行くつもりです。

これからも美しい写真や映像、事故から学べる記事等もを楽しみにしております。

Comment Form
Only inform the site author.

Home > 穂高 > 遭難事故

タグクラウド
リンク
パタゴニア Photo: Barbara Rowell
使いっ走りheyko のつぶやき
メッセージはこちらから

名前:
メール:
件名:
本文:

ランキング

この人とブロともになる

QRコード
QR
ブログランキング

FC2Blog Ranking

ようこそ穂高へ

Return to page top