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穂高 Archive

かなてこ

  • Posted by: Hachiro
  • 2017-10-11 Wed 08:56:48
  • 穂高
今回はちょっと「番外編」デス。

あまり現地情報には関わりのない内容ですので興味のない方にはすみませんです。
かなり長くなりそうですし。




昨日のことです。

白出沢を下山しがてら登山道を塞いでいた大岩を除去しました。

と、言葉で書けばたったこれだけなのですが、この作業は何というか私の長い小屋番暮らしの経験がモノをいったかなぁと。







動画をご覧いただければお分かりのように、岩の大きさはたたみ一畳ほどもありその重さは推定500キロはあろうかという代物でした。
私が小屋に入った当時は、こうした岩を動かす仕事が登山道はもとより小屋周辺でも結構ありました。
そうした場合、もちろん重機など入らない山の上ですからそれは全て手作業となります。
(ちなみに山での仕事は、その目的がシンプルであればあるほど燃えるし面白いものなンです。デカい岩を動かすなんてのはその最たるもの)

その唯一の武器が今回の主役である「金梃子(カナテコ)」です。
金梃子というのはまあつまりはただの鉄の棒で、太さは3~4センチ、長さは(いろいろありますが)今回使ったのは150センチ。
それぞれの両端は、片側は鈍く尖っていて、もう一方はヘラのように平たく潰れた先端をしています。
実はこの「平たく潰れた先端」というのがミソで、これを岩などの重量物の下に差し込んで梃子として使うのです。
ただしその使い方にはコツというか相応のテクニックが必要です。
シロウトがいくらやってもビクともしない大岩が、技を身につけた者が扱うとアラ不思議、途方もない大岩をウソのように動かすことができるのです。
梃子というのは普通の方がお考え以上に凄い力があるものでして、その使い方も「ハネ梃子」「トメ梃子」「オクリ梃子」などいくつもの技があります。
そしてその使い方のポイントはどんな場合でも「支点」です。
「宇宙に支点さえあればカナテコ一本で地球でも動かしてみせる!」という名言(?)を言い放ったのは、穂高小屋の先代の今田英雄氏でした。
そう、英雄さんはこの金梃子の使い方がめっぽう上手かったのです。
そのテモト(助手)をしている頃、たまに私が金梃子を扱うと、
「アホっ! そうじゃねーんだよ! わかっとらん奴だな!」とか、
「ヘタクソ! おまえが使っとるのは力ばっかで道具を使っとらん!」とか、
「だぁかぁらぁ、ダメなもんがエラそーに手ぇ出すな!」とか、まあボロカスでした。
当時は、現場で手とり足とり人にものを教えるなんてことは一切なく、出来ん奴は引っ込んどれ! やりたきゃ自分で出来るようになれ! があたりまえ。
例えば岩を扱う仕事で手袋をし忘れていても、それを誰も注意なんてしてくれません。
自分がやってみて手を血まみれにしてみれば、次からは手袋が必要だということはいやでも身に沁みました。
山では誰かを頼りにしてはダメなんだ、テメェの足で歩くことこそ大切なのだと教わったのです。
(まぁ今の時代には流行らないでしょうけれど)

あの頃、例えば石垣作りだとか土地造成だとかの土方仕事が小屋ではいっぱいあって、そうした仕事に英雄さんをリーダーとして男衆みんなで立ち向かうのがとても楽しかった(もっとも「楽しかった」なんて今だから思うわけで、当時は下っ端の地味な作業ばかりでクソ面白くもなかったわけですが)のですが、やはり花形は直接石を扱う「石工」役であり上手く金梃子を扱う者でした。
だから私は早く一人前の仕事がしたくて英雄さんの目を盗んではあーでもないこーでもないと金梃子で岩を動かそうとしたものです。
で、ふと気がついてみるとあれから30年、いつの間にか私もいっぱしの金梃子使いになっていました。
というか、近頃ではだいたい一目でその岩のヘソというかツボが分かるようになったのです。






そういえば、いつだったか英雄さんを訪ねるとTVの前で「そーじゃねーんだよ! そこじゃない!、、えーいマァ‼︎」とえらくご立腹のご様子、
そのTV画面を覗き込むと、それはある災害現場の報道画面でした。
岩盤崩落で埋まった車に幼児が取り残されており、それを消防のハイパーレスキュー隊なる方々が救助にあたっているのですが、その現場は上部がまたいつ崩れるかわからないような状況で、重機はもちろん振動を与える機器は使えず岩をひとつひとつ金梃子を使って手作業で取り除いているのです。
しかしその様子が英雄さんにはとてももどかしく、拙く見えたようでした。
…ナルホド、そりゃあ失礼ながらあの方たちよりも我々の方が金梃子なら数段上手いわなぁ、と。
私は常々思うのですが、例えば穂高界隈の各山小屋のエース達を集めた災害救助隊を組織したら、そりゃあもう優秀な部隊になるのではないでしょうか。
遭難救助はもとよりチェーンソーや土方道具の扱いにも長けていますしヘリの対応だってバッチリです。
何より「何もない場所でそれでもそれを何とかする」というのが小屋番の真骨頂みたいなもの、災害現場で活躍できぬわけがないと思うのですが。

閑話休題(それはともかく)

実は今回鉱石沢で動かした岩はもうかれこれ10年以上前に崩落したもので、そこを通る度に「ジャマやなぁ」と思わなくもなかったのです。
まして濡れた下りではちょっと気を使う所で、でも注意すれば脇を容易に抜けられるので、まぁ良いかと。
それにそうした見た目に「明らかに危なそうな場所」というのは、むしろ誰もが用心するので事故は起こらないもの。
(奥穂とジャンダルム間の「馬ノ背」なんてまさにそんな場所です)

ところが、その場所で先月立て続けに滑落事故が起こってしまったのです。
幸い二件とも命に別状はありませんでしたが、あの場所で墜ちればタダでは済みません。
そのうちの一件などは発生状況を聴くと、後ろからガイドさんが「そこ滑るから気をつけて!」と声をかけた直後に墜ちたとか …何をか言わんやです。
岳沢の坂本くんも指摘していますが、最近そうした明らかに危ない場所(危なく見える場所)での遭難が増えているのでしょうか。


と、本記事の目的は実は昨今の遭難事情を憂うことではなく、
こうして長々と駄文を連ねて(動画まで載せて)何を言いたいのか、というと、
ハチローの金梃子使いが今や神の領域に達しているのとちゃうか! ということを自慢したかっただけなのです。

というのも昨日の大岩除去は「ハネ梃子」「オクリ梃子」を微妙に使いわけ、それは見事に岩をどかせたものだからまぁ気持ちよくって。

なので、えっへん、とくとこの動画をご覧あれ。






ね? 見事でしょ⁈



え? 岩どけた跡の道が滑りやすいンですけどって?


……知らんがな、そんなん。








































シーズン閉幕

  • Posted by: Hachiro
  • 2017-10-09 Mon 20:39:51
  • 穂高
この連休は、初日こそ雨となりましたが昨日、今日と晴天となり多くの登山者で賑わいました。
特に昨日は、季節が逆戻りしたかのような陽気で、縦走をされた方は快適な稜線歩きを満喫されたのではないかと思います。

でも今日の午後には冷たい風が吹き始め、稜線はもう雲に覆われています。

この先の天気予報を見るに、どうやら今シーズンは今日を持って一般の方の穂高稜線の登山は終了となりそうです。



9_130924 ガス踊るジャンダルム
(ガスに包まれ始めたジャンダルム)




もちろんまだ根雪も来ていませんし、ポカポカ陽気の日もあるのかもしれません。
山小屋の営業も来月初旬まで続きます。
でもこれからの穂高はもういつ風雪の世界となってもおかしくはないのです。
(事実、連休直前には一時積雪となりました。その後雨となって消えたので問題とはなりませんでしたけれど)

私がこの連休で見かけた登山者で一番心に止まった方は、お尻に継ぎをあてた履き古したニッカボッカ姿の単独の老登山者でした。
その方は、ザックの脇にアイゼンケース(それは明らかに10本爪以上のもの)を括りつけておられました。

この連休、天気予報的には雪の心配はほぼありませんでした。
それでも、「この時期の穂高なら、、、」と持参されたのでしょう。
結果、それは徒労に過ぎない準備ではあったかもしれません。
でもその心構えや備えこそが大切なのです。
山に謙虚になり、用心をし、真剣に登山をするとはそういうことであると、
その後ろ姿に、私は改めて教わった気がしました。



これからの季節、穂高はもうそうそう人にやさしい貌はしてくれません。



























中秋の名月 2017

  • Posted by: Hachiro
  • 2017-10-05 Thu 04:14:20
  • 穂高
昨日は冷たい強風の一日で、周囲には大雲海が広がりました。
めずらしく信州側も雲海に覆われ、その中で槍穂高の主稜線だけが雲の上であるかのよう。


171004 槍穂高主稜線
(2017/10/04 槍穂高主稜線ー奥穂山頂より)




そして日没の頃、その大雲海から見事な月が昇ってきました。

雲上から望む「中秋の名月」です。



171004 中秋の名月_2
(2017/10/04 アーベントロートの前穂と「中秋の名月」)




















初雪

  • Posted by: Hachiro
  • 2017-10-02 Mon 11:37:11
  • 穂高
10月に入ったとたん雪が来ました。

今年の「初雪」です。


171002 初雪_2
(2017/10/02 9:00 a.m,)


一時はかなりの振りでしたが、まだ積もるほどではないですね。

穂高の季節はもう、「秋」から「初冬」へとうつろい始めています。


P1422145.jpg
(2017/10/02 紅葉と舞雪ー4K動画より切り出しー)
























錦秋の週末

  • Posted by: Hachiro
  • 2017-09-30 Sat 20:58:05
  • 穂高
今日も稜線から日帰りで紅葉撮影。



170930 涸沢紅葉
(2017/09/30 涸沢紅葉)




秋晴れのしかも週末の涸沢は、それはそれは大勢の人々で賑わっておりました。

その中で今日私が特に印象的だったのは、訪れていた方どなたもが満足げな表情をされていたことです。

例えば撮影中にこんな会話が耳に入ってきました。

「やーオレ、こんなキレイなもの目に出来て幸せやわ〜
オレ達サラリーマンは、週末と晴れと紅葉のピークが一致せんと、こんなのなかなか見られないもんな」
「そうだよなー、だからオレも今週末はその条件が揃いそうだったんで、思わず金曜日にばあちゃんが危篤ということにして休んだんよ。
いやー、良かったわぁ!  サイコーだぁぁ!!」


ナルホド、
そうですよね。
普通のお勤めをされている方々が、こうした紅葉の最盛期の涸沢に身を置くというのはなかなかに難しいことであろうし、
しかもそれがドンピシャリに今日のような秋晴れとなるのはそうはないですよね。


行き交う老若男女すべての方が、錦織りなす光景に感嘆し、感動し、錦織りなす涸沢の秋を堪能されていたように思います。




そして稜線に戻って見下ろす涸沢には大テント村が出現しておりました。
その数なんと1400張!


何といいますかその夜景の光ひとつひとつからは、素晴らしい景色に出会えた人々の喜びが伝わってくるようでした。


170930 涸沢夜景
(2017/09/30 涸沢テント村の夜景 6:30 p.m.)





まあでも、小屋番としての本音としては、このトンデモなテントの数は「キレイだな〜」とか言ってる場合じゃないのです。
稜線の小屋は、まあなんとかほどほどの混雑で収まっていますけれど、涸沢の2件の山小屋は連日大幅に定員をオーバーしていて、
そのスタッフ達は連日の激務でヘロヘロのはず。
同業者としてはその過酷さがわかるだけに、どうかがんばれよと祈るばかりです。
マラソンで言えば35キロくらいを超えて今が一番キツイところ、でもゴールはもうそう遠くはないゾ。





































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