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ぼちぼちいこか

表層雪崩

  • Posted by: Hachiro
  • 2017-03-28 Tue 16:05:46
  • 穂高
先日の日曜日、徳沢の河原に立つ一本のケショウヤナギの老木に降る雪を撮りに行きました。
狙い通りアプローチの河原は雪がよく締まって歩きやすく、そう苦労せずに徳沢までたどり着けたのです。
そしてこれまた狙い通り、午後には雪も舞い始めてくれました。
しかし、夕方に河童橋あたりまで戻ってきた時には雪は大粒の本降りとなり、あっという間にトレースも消えるほどの積もり方となりました。
そうして少々あせらされる思いをして、上高地を後にしたのです。


170326 徳沢ヤナギ
(2017/03/26 徳沢付近の河原にて)



確かにあれほど締まった雪面にまとまった雪が積もれば、表層雪崩の危険度は高まっていたと思います。

でも涸沢とかであればそうしたリスクに警戒することは出来ても、それが上高地であったならどうでしょうか。
実際、現在の上高地では雪崩に遭うような箇所はほぼトンネルで通過できてしまいます。
しかし昔の釜トンネルの上流側は、それこそ雪崩で多くの人が命を落とした難所であったとか。

この度の栃木県那須町での雪崩事故は「スキー場内であった」ということにどこか安心があったのかもしれません。


それにしても先日の長野防災の事故といい今回といい、本来なら本番での危険を避けるべくの訓練において、
このような取り返しのつかない悲劇が起こってしまったということには、本当に言葉がありません。

今日の昼間にTVの高校野球を目にして「ちょうどこの年くらいの若者たちが逝ってしまったのか…」と胸が詰まりました。

そして、子を喪われた親御さん達を思うと、この先ずっと雪崩以上のつらさや悲しみにさらされ続けるのではと悲痛な思いがします。
































救助要請

  • Posted by: Hachiro
  • 2017-03-20 Mon 18:54:13
  • 穂高
昨日、今日と報じられた西穂ピラミッドピークでの滑落は、ご本人達が自力下山していたとのこと。
先ずはめでたしめでたし、ともかくも無事で何より  ……ではあったのですが、
捜索に赴いた県警隊員や航空隊の方々にとっては、どこかやりきれない徒労感が残ったのではないでしょうか。



160211 西穂独標より
(西穂独標より、左からピラミッドピーク、西穂本峰、右奥にジャンダルムと奥穂高岳)




私たち小屋番にとってもこうした事例は他人事でもありません。

「奥穂の向こうで息も絶え絶えの人がいたっ! 助けてやってくれ!」
あるいは「もの凄い落石の音がして、人の大声が聞こえた! 誰か墜ちたみたいだっ!」
と、小屋に駆け込んで来られる方がちょくちょくおられます。
そうした場合「本人から救助要請はありましたか?」とか「墜ちた人は見えますか?」と尋ねると、
「いや、本人は疲れて口もきけないようだ」とか「直接には目撃していない」というようなことがけっこうあります。
そうなるとそれが遭難であるかどうかの確認がとれず、具体的な救助要請も存在しないということになります。
そうした場合にはいつも頭を悩ませます。

その時の天候や時刻、また他の目撃情報の有無などから、その時々で対処は様々ではありますが、
基本的には私たち小屋番は「遭対協」の救助隊員という立場であり、警察や当事者からの要請が無ければ救助活動は行えません。
しかし現実の遭難の際には何より急を要します。
なのでそうした手続きや段取りは後回しにして、ともかく現場へ!と走らざるを得ないこともあるのです。

そうして息急き切って駆けつけてみると、
そのご本人と思しき方は「イエ、私は救助など頼んだ覚えはない」
「ゆっくりにしか歩けないけれど、これが私のペース」
「落石があったから、後続に大声で注意しただけ」
なんてことも。


もちろん、その方達に非はありません。
そして報らせてくださった方も善意からの行いです。

だから誰が悪いというわけではないのだけれど、
誰に非があるというのでもないのだけれど、
でもその時流した汗やゼイゼイと痛む喉は、ただただ不快なものでしかなくなってしまうこともあるのです。

まぁどんな仕事だって、そうした悲嘆を抱えながらのものなのでしょうけれど。



ともかく、この度出動された警備隊、救助隊、航空隊のみな様、
やりきれない空振りではあったけれど、まぁオロクの収容やるよりはずっと気持ちは楽であったと納めてください。

本当にご苦労様であり、お疲れ様でした。




それにしても、昨今の西穂はちょっと遭難多過ぎる……





































忘れ物

  • Posted by: Hachiro
  • 2017-03-16 Thu 15:39:34
  • 穂高
無人小屋で、雪降る夜にひとり串田孫一の言葉をかみしめる……
この私がそんな気取ったことをしようとすると、だいたいがロクでもないことになる訳でありマス。

昨日、約2時間のラッセルの後たどり着いた某所で、
汗が冷える前に暖をとろうと使い慣れたコンロに着火し、先ずは湯でも沸かすかなーと思ったら…

なっ、無いぃぃぃ〜  ないど? 無いやんけぇぇぇぇぇ!!!  って。

なにが無いのか?


コッフェルでんがなコッフェル!

酒とつまみとシュラフで膨れたザックのどこを探しても、あのいつもの銀色の物体が見当たりません。
アレがなけりゃあお湯はおろか水も作れない!
しかもなんと「水なんかなんぼでも雪溶かしゃあええわ」とばかり、手持ちの水分はビールと日本酒のみ!

「マジっすか…」と顔にスダレがかかってしまった。


170315 MSR_046
(沸かすべき水も、温めるべき鍋もなく、ただ虚しく燃えるMSR…)


で、つまりはとうてい優雅とは言えない夜となってしまったわけデス。


しかし山って、特に雪山って、なんかやたらと持ち物多くありません?
で、ほんとーによく忘れ物をしてしまう。

アイスクライミングに行ってアックス忘れるとか、
撮影に行ってCFカード(記録メディア)が入ってなかったとか、
そらもうどーしようもないことを幾度もやらかしているというのに……

ほんまに、困ったもんデス。

























若き日の山

  • Posted by: Hachiro
  • 2017-03-15 Wed 11:20:36
  • 穂高
先日、知り合いの某山岳雑誌の編集者の方から、ある一冊の本を送っていただきました。
その本とは、串田孫一 著「若き日の山 」 (ヤマケイ文庫)


若き日の山


この随筆集は、氏の有名な「山のパンセ」の前に書かれたご自身初の山の本であったとか。
それが今回再文庫化されるにあたって、表紙や文中に串田さんの秀逸なイラストが配され、原著のもつ雰囲気を大切にされた装丁となっています。

この著書は以前に他の出版のものを読んがことがあるはずで、収録されているエッセイのタイトルも覚えのあるものが幾篇もありました。
でも、最初の「馴鹿の家」を読み始めてすぐに私はいったん頁を閉じました。
「あぁ、これはこんなに簡単に(無造作に)読み進めてはいけない……」と。

山に関わって生きてきた者のひとりとして、私は串田孫一さんほど人間の山への想いを正しく言葉にされた方はいないと思っています。
もちろん、人それぞれの山があり、人それぞれの山の感じ方や関わり方がありましょう。
実際、山に関する名著は数多くあります。
ただ不遜を承知で言わせていただければ、私個人にとっては串田さんの紡ぐ言葉は、まさしく自分が山へ抱く想いを表してくれているのです。

そりゃあ私ごときがあれほど格調高い文章を記せるはずもありませんし、そんな語彙力もありません。
でもその言葉が伝えてくれる空気感のようなものは、間違いなく自分が山で感じている心の在りようでなのです。

「風の伯爵夫人」「別れの曲」「氷の岩峰」「孤独な洗礼」……
その珠玉の名篇たちは、自分と山との間にある「確かに存在するけれど言葉にはできない何ものか」を、見事に表してくれていると思えます。

例えば「夕映え」という一編に描かれているその情景は(携えているものがスケッチブックとキャメラとの違いこそあれ)、私が幾度も過ごしてきた夕暮れの山での刻そのものです。



131017 涸沢岳より_03
(涸沢岳よりの夕映え)



さて、小屋開けまでもうひと月の迫ってきて、何かと慌ただしいこの頃ですが、幸い今日、明日は特別な予定もありません。
おまけにおあつらえむきの「なごり雪」も舞っています。

自宅からほど近い登山口から、雪の中を2時間ほど歩いた某所に私のお気に入りの場所があります。
その無人小屋はいつ行ってもまず誰にも会うことはないし、何より良いのが携帯の電波も届かない。

コンロとシュラフと少々の酒を携え、もちろんこの「若き日の山」の文庫を忘れずに、今宵はそこへ向かうとしますか。






























哀悼

  • Posted by: Hachiro
  • 2017-03-06 Mon 18:38:03
  • 穂高
今回のヘリ事故は最悪の結果となりました。

長野県防災航空隊とはその発足からのおつき合いであり、救助現場を共にしたことも幾度となくありました。
また亡くなられた岩田機長とは遭対協の会議などで幾度かお会いし、酒を酌み交わしたこともあります。


121007 アルプス_8122
(救助活動中の長野県防災ヘリ「アルプス」)



つい先日、私は新潟県の消防に招かれて山岳救助に関するお話をさせていただいたことがありました。
そのセミナーに参加してくださった消防隊員の方々の熱意は凄まじく、消防と民間(あるいは警察)という立場の違いなどまったく関係なしに、人命救助に携わる者としての真摯な思いとその矜持に、私自身がいたく感じ入らせていただいた次第でした。


今回の事故に際して、山岳救助に関するネガティブな意見を多く目にします。
その是非はともかくとして、我々現場に関わる者としては目の前の出来事に対して全く手を下さないという選択肢はありません。
実際に救助を行う側にとっては、その要救助者が「正しい行いであったか、どうか」などはどうでもいい。
常に我々が第一に考えるのは「その人を救うことができるかどうか」ということであり、自分たちの安全を前提とした上での「やれるか、やれないか」の二択でしかありません。
好き勝手に山に行ったのだから助けなくてよい、ということは我々にはあり得ないのです。


それと、よく「命懸けの救助」という言葉を聴きますが、私自身はこれまでにレスキュー現場で命を懸けたことなんかはありません。
冗談ではない、、 私にだって愛する家族がありますし、自分の命をそう軽くも思ってはいません。
一か八かで己の命なんて懸けられるわけがない。
ただし、人の存在を遥かに上回る「山」というものを相手にする以上、こちらが到底予測できない事柄はいつだって起こり得ます。
なので「結果として命が懸かってしまった」現場というのは確かにありました。
だからこそ、我々は山を畏れ、少しでもそのリスクを減らすべく日々の訓練を行うのです。



121007 アルプス_8133
(錦繍の涸沢で救助活動中の長野県防災ヘリ「アルプス」)




そんな訓練の最中での今回の事故には、……だから、言葉もありません。



ただただ、これまでの彼等の功績に深く頭を垂れ、心よりの哀悼を捧げさせていただきます。






































































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